心の状態や思考を整理するのに、言語化や構造化のスキルが非常に重要だと感じている。
このブログを始めたのも、読書録をつけているのも、心の学びの定着化が目的であるが、言語化のトレーニングも目的の一つと考えている。
本書はそういった観点で選んだ一冊。
『抽象的なものは分かりにくい』というのが一般的な捉え方として定着しているが、物事を抽象化して考える能力というのは非常に重要である、と著者は訴えている。
人類が発展してきた背景には、この抽象化の能力により、言語や数を発明し、物事を構造化して捉え、理解し、再現できたことがあるとのこと。
個別事象毎に具体的に捉えて見ていては時間ばかりかかるだけでなく、応用が利かないが、
これら個別事象に関係性を見出し、構造化することで圧倒的に効率的に考える事ができる。
これが抽象化することの威力だとしている。
例え話が上手い人なんかも、この抽象化能力が高いということである。
複雑な物事をシンプルに捉え、全体像を理解することも抽象化能力であり、要約なんかもこれにあたる。
具体的思考に偏っている人は、『世の中そんなに単純では無い』と、一般化を嫌う傾向にあるということだが、まさに自分のことを言われているようで耳が痛い思いである。
経営層の言っていることがしっくりこない、上司の言動に一貫性を感じない、というのも、実は見ている抽象度のレベルが違っていることからきている可能性があり、要注意だなぁと振り返る機会になった。
一方で、抽象化が全てではなく、大事なことは、抽象化と具体化の往復であり、抽象化で物事の全体像を把握し、必要に応じて具体的に掘り下げることである。
抽象的な信念、理念から、具体的な行動に落とし込む計画も、まさにこの抽象化と具体化の往復であり、意識的に取り組んで身につけていく必要があると思った。
本書に書いてある通り、算数や国語の授業でなんとなく抽象化する訓練は教育に組み込まれてはいるものの、抽象化の概念を教えてもらえる授業はないため、その点で本書は考え方から見つめ直せる一冊です。
具体思考に偏っている自分は理解のため2回読みました。
抽象化技術のノウハウではなく、抽象化とは何なのかを考える本です。
【個人的書評】
・面白さ :★★★☆☆
・為になる度:★★★★★
・濃さ、深さ:★★★★☆
・難しさ :★★★★☆
・所要時間 :約4時間
・薦めたい人:伝える力、理解する力を高めるヒントを得たい人。物事を一般化することが苦手な(不快に感じる)人
【心に残しておきたいワード】
・哲学、理念等の抽象概念は、具体レベルの行動に統一感や方向性を与える役割を果たす。大きなビジョンを決定する(要するに何がしたいのか)のも抽象化能力。
・本質を捉えることは、表面事象から抽象度の高いメッセージを導き出すこと。
・具体、抽象の一人歩きは本末転倒を呼ぶ。具体と抽象の往復運動が重要。