年末の休暇中、とある書店に平積みされており、手にとった1冊。
タイトルからは、生産性やタイムマネジメントに関する内容を想像するが、よくあるノウハウ的なものではなく、『時間について』、そしてその時間の中での『生き方について』に言及した内容となっている。
イントロから、『生産性とは罠なのだ』など、非常にキャッチーで痛快な言葉が並べられている。
タイムマネジメントのテクニックやツール、ライフハックなどでいくら生産性を上げても、やることはさらに増え、加速化される生活にさらにストレスが高まっていく。
インターネットやSNSはやりたいことの選択肢をどんどん増やし、一度きりの短い人生でできる限りそれらを体験しないと満足感が得られない。
時間を有効に使うためのこれらのツールが、もっとやらねばという切迫感を悪化させている。
自称『生産性オタク』だった著者が、こういった状況に気づき、壊れていく社会に警鐘を鳴らしている。
時間を支配しようとすると、それが逆に時間に苦しめられる原因となる。
重要なのは、
『時間、選択肢、自分の能力の限界を受け入れ、本当に大事なことを主体的に選択し、それ以外を捨てること。失う不安よりも、捨てる喜びを手に入れることであるー。』と著者は言っている。
タイムマネジメントのテクニックでも、『やらないことを決める』ということは度々目にするが、この本でのポイントとしては、その態度、心の持ち方についてである。
その辺りについて痺れるフレーズでしたためられている。
内容もさることながら、よくこんなキャッチーなフレーズを創造できるものだと感嘆。
翻訳前の表現のニュアンスはわからないが、翻訳者の言語化力も大きいのだろう。
今を生きる、自分を生きるということを考えさせられる一冊です。
【個人的書評】
・面白さ :★★★★★
・為になる度:★★★★☆
・濃さ、深さ:★★★★☆
・難しさ :★★★☆☆
・所要時間 :約5時間
・薦めたい人:忙しく、生産性を追求して日々の体験が色褪せてしまっている人。
【心に残しておきたいワード】
・『時間が余ったらやろうと思っても、時間は絶対余らない。大事なことは今やらないとできない。』
・『意味のある体験をするには、その体験に注意を向けなくてはならない。注意を向けていないことは、起こっていないのと同じ』
・「いつか何かをしたら」という未来志向態度は、現在を永遠に先延ばしにする考え方である。人生には「今」しか存在しない。